初めての熱性けいれんは、多くのパパ・ママが「うちの子は大丈夫なの?」と強い不安を感じる瞬間です。目の前で赤ちゃんが突然けいれんを起こすと、頭が真っ白になってしまうのは当然のこと。この記事では、日本医師会や日本小児神経学会『熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023』の内容をもとに、熱性けいれんが起きたときの正しい初期対応と、やってはいけない対応を月齢の視点も交えてわかりやすくまとめました。5分ルールや救急車を呼ぶ目安、受診のサインも具体的に整理しています。判断に迷う症状があるときは自己判断せず、小児科や救急にご相談ください。
熱性けいれんとは?まず知っておきたい基礎知識
どんな年齢で・どのくらいの割合で起きるのか
熱性けいれんは、発熱にともなって起こるけいれん(発作)で、おもに生後6か月から満60か月(5歳ごろ)までの乳幼児に見られます。日本での有病率はおよそ7〜9%とされ、10〜15人に1人ほどが経験する、比較的よくある発作です。生後6か月〜3歳ごろまでに発症が多く、7歳以降ではほとんど見られなくなります。
また、一度経験した子のうち約3割で再発するとされています。「起きてしまった=重い病気」というわけではありませんが、初めてのときや様子がふだんと違うときは、必ず医療機関で相談することが大切です。
熱性けいれんの典型的な症状
多くの場合、発熱してから24時間以内、とくに熱が急に上がる「上がり際」に起こりやすく、次のような様子が見られます。
- 白目をむく、視線が合わない
- 手足が突っ張る、またはガクガクと震える
- 呼びかけへの反応がなくなる
- 唇や顔色が青白くなる(チアノーゼ)
典型的な熱性けいれん(単純型)は数十秒〜数分でおさまり、発作後は徐々に意識が戻ることが多いとされています。発熱の経過そのものが気になるときは、赤ちゃんの発熱で解熱剤を使うタイミング|座薬の使い方と受診の目安もあわせて確認しておくと安心です。
単純型と複雑型のちがい
熱性けいれんには、経過が良好な「単純型」と、注意が必要な「複雑型」があります。ちがいを知っておくと、受診の判断に役立ちます。
- 単純型:持続が15分未満、体の左右対称に起こる、24時間以内に1回だけ。多くはこのタイプです。
- 複雑型:15分以上続く、体の一部だけ・左右差がある、24時間以内に繰り返す。このタイプは追加の検査や相談がすすめられます。
どちらか自己判断で決めつける必要はありません。「時間」「左右差」「回数」を記録しておけば、医師が判断する大きな手がかりになります。
【最重要】熱性けいれんが起きたときの正しい初期対応
まず落ち着いて行う5つのステップ
- 安全な場所に、体を横向きに寝かせる:吐いたものが気管に入るのを防ぐため、体の左右どちらかを下にして寝かせます。周囲の硬いものや角のあるものはどけておきましょう。
- 時間を計り始める:スマホのストップウォッチなどで、けいれんが「いつ始まったか」を記録します。5分を判断の目安にするため、時間の把握がとても重要です。
- 衣服をゆるめ、呼吸をしやすくする:首まわりのボタンやスタイをゆるめます。
- 様子を観察・記録する:全身か体の一部か、左右差はないか、目の向き、持続時間をメモしておくと受診時に役立ちます。
- けいれんがおさまったら回復を確認する:呼吸・顔色・手足の動き、意識が戻っていくかを見守ります。
スマホで動画を撮っておくと診察に役立つ
可能であれば、けいれんの様子をスマホで動画撮影しておくと、医師が発作のタイプを判断する大きな手がかりになります。あわてて撮る必要はありませんが、家族が複数いる場合は「一人が対応、一人が撮影と時間計測」と役割を分けると落ち着いて動けます。動画がむずかしいときは、時間と様子のメモだけでも十分に役立ちます。
やってはいけない対応|正しい対応との対比表
昔から言い伝えられている対応の中には、かえって赤ちゃんを危険にさらしてしまうものがあります。とっさのときに迷わないよう、「やってはいけないこと」と「正しい対応」を対比して整理しました。
| やってはいけない対応 | 正しい対応 | 理由 |
|---|---|---|
| 口に割り箸・指・タオルなどを入れる | 口には何も入れない | 嘔吐を誘発し、吐いたものが気管に入る危険。舌をかみ切ることはほとんどありません |
| 体を強く押さえつける・揺さぶる | 周囲の危険物をどけ、そっと横向きにする | 無理に止めようとすると、けが(脱臼・骨折)や窒息の原因になることがあります |
| 大声で名前を呼び続けて起こそうとする | 静かに見守り、時間と様子を記録する | 刺激で改善するものではなく、観察がおろそかになります |
| あわてて水やお茶、薬を飲ませる | 意識がはっきり戻るまで飲食させない | 意識がない状態での飲食は誤嚥(ごえん)の危険があります |
| すぐに抱き上げて激しく動かす | 平らで安全な場所に寝かせる | 移動時の転落や、けいれん中の体の負担を避けるため |
「何かしてあげたい」という気持ちが、かえって危険な対応につながることがあります。基本は「そっと横向きにして、時間を計り、静かに見守る」と覚えておきましょう。
救急車を呼ぶ目安と、受診のサイン
5分ルールと、すぐ救急車を呼ぶべきケース
けいれんの多くは数分でおさまりますが、次のような場合はためらわず119番で救急車を呼びましょう。
- けいれんが5分以上続く(5分を一つの目安に救急要請を検討)
- いったんおさまっても、意識が戻る前に発作を繰り返す
- けいれんがおさまっても意識がはっきり戻らない
- 唇や顔色が悪いまま、呼吸がおかしい
- 体の一部だけがけいれんする、左右で明らかに差がある
- 生後6か月未満、または初めてのけいれんで様子がふだんと違う
特に発熱から2〜3日たってからのけいれんや、けいれん後に強い頭痛・嘔吐が続く場合は、髄膜炎など別の病気が隠れていることもあるため、早めの受診が必要です。高熱が続く病気の見分けについては、突発性発疹で高熱と不機嫌はいつまで続く?受診の目安や赤ちゃんの風邪 症状別の対処法と受診目安も参考になります。
救急車を呼ぶほどではないが受診したいとき
数分でおさまり意識も戻った場合でも、初めての熱性けいれんは必ず一度は医師の診察を受けましょう。日中であればかかりつけの小児科、夜間・休日は地域の救急相談窓口(#8000 など)や夜間救急を活用してください。判断に迷ったときは、無理をせず専門家に相談することがいちばんの安心につながります。
受診時に伝えたい「記録メモ」チェックリスト
受診の際、医師が発作のタイプを見極めるために役立つ情報があります。落ち着いてから、次の項目をメモにまとめておきましょう。
- 始まった時刻と持続時間(何時何分から、何分間続いたか)
- けいれんの様子(全身か一部か、左右差の有無、目の向き)
- 発熱の経過(いつから、最高で何度だったか)
- けいれんの前後の様子(意識、顔色、嘔吐の有無)
- 今回が初めてか、これまでの回数
- 家族に熱性けいれんの経験がある人はいるか
スマホで撮った動画があれば、あわせて見せられるよう準備しておくと安心です。
再発は予防できる?次の発熱に備えるポイント
熱性けいれんを一度経験すると、「また起きたらどうしよう」と不安になりますよね。約3割で再発するとされますが、ふだんの生活でできる備えを知っておくと、次の発熱時に落ち着いて対応できます。
- 解熱剤でけいれんそのものを予防することはできないとされています。熱を下げること自体は赤ちゃんが少し楽になる目的で行うもので、けいれん予防のために無理に使う必要はありません。
- 発熱時は、いつ・何度の熱で始まったかを記録しておくと、経過を医師に伝えやすくなります。
- 再発を繰り返す場合や複雑型の場合は、医師から予防のための薬(ジアゼパム坐薬など)が処方されることがあります。使い方は必ず主治医の指示に従ってください。
- 「熱が上がり際に起きやすい」という特徴を家族で共有し、あわてず横向きにする流れをイメージしておきましょう。
大切なのは、過度に神経質になりすぎないこと。多くの子は成長とともに熱性けいれんを起こさなくなります。
よくある質問(Q&A)
Q. 熱性けいれんは後遺症が残りますか?
単純型の熱性けいれんは、経過が良好で、発達や知能に影響を残さないとされています。ただし、けいれんが長い・繰り返すなどの場合は医師の評価が必要です。心配なときは自己判断せず相談しましょう。
Q. けいれん中に呼吸が止まって見えます。大丈夫でしょうか?
けいれんの間、一時的に呼吸が浅くなったり顔色が悪くなったりすることがあります。多くは発作がおさまると呼吸も戻りますが、おさまっても呼吸がおかしい・顔色が戻らないときは、ためらわず救急車を呼んでください。
Q. 一度起きたら、また必ず起きますか?
必ず再発するわけではありません。再発するのは約3割とされ、多くは数回程度です。年齢が上がるにつれて起こりにくくなります。
まとめ|あわてず「横向き・時間・観察」で見守ろう
熱性けいれんは生後6か月〜5歳ごろに多い、比較的よくある発作です。目の前で起きると強い不安を感じますが、大切なのはあわてて何かをするのではなく、そっと横向きにして時間を計り、静かに様子を観察すること。口に物を入れる・押さえつけるといった対応は避けましょう。5分以上続く、意識が戻らない、繰り返すといったサインがあれば、ためらわず救急車を呼んでください。
初めてのけいれんは必ず一度は医師の診察を受け、記録したメモや動画を伝えると診断に役立ちます。この記事は一般的な情報の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。気になる症状や判断に迷うことがあるときは、自己判断せず小児科・救急にご相談ください。
【出典】日本医師会「白クマ先生の子ども診療所|熱性けいれん」/日本小児神経学会『熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023』(Mindsガイドラインライブラリ)
※本記事は公的機関・学会の情報をもとに編集部が作成した一般的な解説です。医師など専門家による監修は受けていません。診断・治療の判断は必ず医療機関で行ってください。

