赤ちゃんのおむつを開けたら、うんちに赤いものが混じっていた——。血便を見つけた瞬間の不安は、言葉にできないほど大きいものですよね。まず知っておいていただきたいのは、赤ちゃんの血便で最も多いのは「便が硬くて肛門が少し切れた(切れ痔)」というケースだということです。ただし、なかには急いで受診したほうがよいサインもあります。この記事では、色・量・混じり方から見分ける判定表と、月齢別の受診の目安、緊急度のセルフチェックを整理しました。判断に迷うとき、気になる症状があるときは、自己判断せずかかりつけの小児科へご相談ください。
まず確認|すぐに受診・救急を考える血便のサイン
血の色や量よりも大切なのは、「血便以外に何が起きているか」です。次のサインを伴うときは、時間帯にかかわらず受診を優先してください。
血便+この症状なら、様子見をやめて受診へ
- ぐったりして反応が鈍い、呼びかけへの反応が普段と明らかに違う
- 顔色や唇の色が悪い、皮膚が青白い
- 激しく泣いておなかを痛がる様子を繰り返す
- 何度も吐く、緑色(胆汁様)のものを吐く
- 38度以上の発熱を伴う(生後3か月未満は発熱があるだけで受診が基本)
- おしっこが半日以上出ていない、唇や舌が乾いている
- 便が真っ黒でタール(コールタール)のようにねばつく
日本小児科学会と厚生労働省が監修する「こどもの救急」でも、「うんちに血が混じっていそうだ」は元気のなさ・顔色・腹痛と組み合わせて判断する項目として挙げられています。血便そのものより、赤ちゃんの全身の様子が判断材料になると考えてください。
参考:日本小児科学会・厚生労働省監修「こどもの救急(ONLINE-QQ)ウンチが変」
「イチゴゼリー状の便+激しく泣くを繰り返す」は腸重積を疑うサイン
特に見逃したくないのが腸重積症です。腸の一部が腸の中に入り込んでしまう病気で、生後6か月〜2歳ごろに多いとされています。典型的なのは次の3つの組み合わせです。
- 間欠的な激しい泣き:突然火がついたように泣き、数分するとケロッとして、また泣き出すことを繰り返す
- 嘔吐
- イチゴゼリー(イチゴジャム)状の粘血便:粘液と血が混じったどろっとした便
注意したいのは、血便は初期には出ないことが多く、発症から半日以上たって現れる場合があるという点です。つまり「血便がまだ出ていないから大丈夫」とは言い切れません。泣き方と嘔吐のパターンが上のように繰り返しているなら、血便を待たずに小児科・救急外来へ相談してください。腸重積は早く見つかるほど、手術をせずに整復できる可能性が高くなるとされています。
なお、ロタウイルスワクチンの初回接種後1〜2週間は腸重積の発生がわずかに増えることが知られており、厚生労働省も初回接種を生後14週6日までに済ませることを推奨しています。接種直後の時期に上記の症状が出た場合も、早めに相談しましょう。
赤ちゃんのうんちに血が混じる主な原因
いちばん多いのは肛門が切れる「切れ痔(裂肛)」
赤ちゃんの血便で最も多い原因は、硬い便が出るときに肛門の皮膚が切れてしまう切れ痔です。特徴は次のとおりです。
- 血は便の表面に付着している(便全体に混ざり込んでいない)
- 色は鮮やかな赤
- 量はティッシュに付く程度〜線状とごく少量
- 排便時に泣く・いきむ・顔を赤くするなど、痛がる様子がある
- 排便後はけろっとして機嫌がよい
硬い便が続いているなら、まずは便をやわらかくする工夫が第一歩です。月齢別の対処法は赤ちゃんの便秘に綿棒浣腸|正しいやり方とコツ・月齢別の受診目安ガイドにまとめています。
ミルク・母乳のたんぱくが刺激になっていることも
生後まもない赤ちゃんでは、牛乳や母乳に含まれるたんぱく質が腸に炎症を起こし、血便が出ることがあります。厚生労働省の難病情報センターでは「新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎」として、繰り返す嘔吐・血便・体重が増えない・下痢が長く続くといった症状が挙げられています。
母乳育児の場合、お母さんが摂った乳製品の成分が母乳を通じて影響することもあるとされています。自己判断で授乳やミルクをやめると栄養が不足する心配があるため、まずは小児科で相談し、指示を受けてから調整するようにしてください。
参考:難病情報センター「好酸球性消化管疾患(新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎)」
感染性腸炎(細菌性)による粘血便
カンピロバクターやサルモネラなどの細菌性腸炎では、発熱・下痢・粘液の混じった血便がセットで見られることがあります。下痢が続いている場合は脱水にも注意が必要です。水分の与え方や脱水のサインは赤ちゃんの下痢が続くときの受診目安|見逃したくない脱水サイン月齢別ガイドで確認できます。
【判定表】色・量・混じり方でわかる見分け方
おむつを前にして冷静になるのは難しいものですが、次の3点を確認すると、伝えるべき情報が整理できます。
血便の見分け方 早見表
| 見た目 | 混じり方 | 考えられること | 目安の対応 |
|---|---|---|---|
| 鮮やかな赤・ごく少量 | 便の表面に線状・点状に付着 | 切れ痔(裂肛)の可能性 | 便をやわらかくする工夫をしつつ、続くなら診療時間内に相談 |
| どろっとした粘液+血 | 便全体に混ざる(イチゴゼリー状) | 腸重積・細菌性腸炎の可能性 | 激しい泣きや嘔吐を伴うなら急いで受診 |
| 下痢便に血と粘液 | 下痢のたびに混じる | 感染性腸炎の可能性 | 発熱・脱水の様子を見ながら早めに受診 |
| 真っ黒・タール状 | 便全体が黒くねばる | 胃など上部の出血の可能性 | その日のうちに受診を検討 |
| 白っぽい/クリーム色の便に血 | 色調そのものが薄い | 胆汁の流れの問題など | 早めに小児科へ相談 |
※これは家庭で状況を整理するための目安であり、診断ではありません。当てはまらない場合や判断に迷う場合は、遠慮なく小児科に相談してください。
「血ではなかった」よくある勘違い
受診してみると血液ではなかった、というケースも実はよくあります。次のようなものは、うんちを赤や黒に見せることがあります。
- 赤い食材:トマト、スイカ、いちご、ビーツ、赤いゼリーやジュース
- 鉄剤・鉄強化食品:便が黒っぽくなることがある
- 母乳を飲むときに飲み込んだ血:お母さんの乳頭が切れていると、赤ちゃんの便に血が混じって見えることがある
- おむつの色素:尿と便が混ざって赤みが出て見えることがある
「昨日の食事に赤いものがなかったか」を思い出しておくと、診察のときに役立ちます。うんちの色そのものが気になる場合は、生後2ヶ月のうんちが緑色・回数が減った…心配なサインと受診目安もあわせてご覧ください。
月齢別に見る受診の目安
同じ「少量の血」でも、月齢によって考え方が変わります。低月齢ほど、慎重に見ることが大切です。
生後3か月未満|「少量でも相談」が基本
この時期は自分で症状を訴えられず、体調の変化も急です。血便に気づいたら、量が少なくても診療時間内に小児科へ相談するのが安心です。特に発熱(38度以上)、哺乳量の低下、体重が増えていない、という状況が重なるときは早めに受診してください。
生後3か月〜1歳|腸重積を意識する時期
腸重積が最も多いとされる時期にあたります。血便に加えて「泣く→落ち着く」を繰り返す・嘔吐する様子があれば、夜間でも相談を。一方、便が硬く排便時だけ泣くタイプで、その後は機嫌よく遊んでいるなら、切れ痔の可能性を念頭に、翌日の診療時間に相談するという判断もできます。
1〜3歳|発熱と下痢の有無で分けて考える
この年齢では、細菌性腸炎による粘血便が増えてきます。発熱+下痢+血便がそろうときは早めの受診を。反対に、トイレでいきんで痛がり、便の表面にだけ血が付くようなら、便秘対策を優先しながら経過を見ることが多くなります。
緊急度セルフチェック(合計点で目安を確認)
迷ったときの整理用に、当てはまる項目を数えてみてください。あくまで家庭での目安であり、点数が低くても不安なら相談して構いません。
| チェック項目 | 点数 |
|---|---|
| ぐったりしている・顔色が悪い | 3点 |
| 激しく泣く→落ち着くを繰り返す | 3点 |
| 繰り返し吐く/緑色のものを吐く | 3点 |
| イチゴゼリー状・タール状の便 | 3点 |
| 生後3か月未満である | 2点 |
| 38度以上の発熱がある | 2点 |
| 半日以上おしっこが出ていない | 2点 |
| 血が便の表面に少量付く程度で、機嫌はよい | 0点 |
- 3点以上が1つでもある:時間外でも小児科・救急に相談を検討
- 合計2〜4点:その日のうち、または翌朝いちばんに受診を
- 合計0〜1点:便をやわらかくする工夫をしながら経過観察。繰り返すなら診療時間内に相談
夜間や休日で迷ったときは、小児救急電話相談「#8000」に電話すると、看護師や医師から助言を受けられます。
受診するときに伝えること・持っていくもの
写真とメモがいちばん役に立つ
血便は診察のときにはもう出ていないことがほとんどです。おむつの状態をスマートフォンで撮影しておくと、色や混じり方が正確に伝わります。あわせて次をメモしておくと診察がスムーズです。
- いつから、何回、どのくらいの量の血便が出たか
- 便の状態(硬い/下痢/粘液の有無)
- 発熱の有無と体温、嘔吐の回数
- 機嫌・食欲・哺乳量・おしっこの回数
- 直前に食べたもの(赤い食材の有無)、飲んでいる薬
- 保育園や家族で胃腸炎が流行していないか
おむつはそのまま持参してよい
可能であれば、血便の出たおむつをビニール袋に入れて持参すると、医師が直接確認できます。時間がたつと色が変わるため、写真と両方あると安心です。持参が難しければ写真だけでも十分に役立ちます。
家庭でできるケアと、避けたい対応
切れ痔が疑われるときのケア
- おしりはこすらず、ぬるま湯で洗い流すかシャワーでやさしく流す
- 拭くときは押さえるように。乾かしてから新しいおむつをあてる
- 離乳食が始まっていれば、水分と食物繊維(野菜・果物・海藻)を意識する
- 綿棒浣腸は、月齢と方法を確認したうえで無理のない範囲で
やらないほうがよいこと
- 市販の下剤や浣腸を自己判断で使う:赤ちゃんの体格に合わない場合があります
- 「様子を見よう」と決めつけて記録を残さない:回数や色の変化が診断の手がかりになります
- 自己判断でミルクや母乳を中止する:栄養不足につながることがあります。変更は必ず医師と相談してから
- 強くこする・熱いお湯で洗う:切れた部分の刺激になります
まとめ|多くは切れ痔。でも「泣き方と全身の様子」は必ず見て
赤ちゃんのうんちに血が混じったとき、多くは硬い便による切れ痔で、便をやわらかくする工夫で落ち着いていきます。一方で、イチゴゼリー状の便・激しく泣くのを繰り返す・繰り返す嘔吐・ぐったりしているといったサインがあるときは、時間を置かずに相談してください。
覚えておきたいポイントは3つです。
- 判断材料は「血の色」より全身の様子と泣き方
- おむつの写真とメモを残しておく
- 生後3か月未満は、少量でも早めに相談する
不安な気持ちのまま一晩過ごすのは、とてもつらいことです。判断に迷うときや気になる症状があるときは、遠慮なくかかりつけの小児科、または夜間・休日は「#8000」に相談してくださいね。
参考・出典:こどもの救急(日本小児科学会・厚生労働省監修)/厚生労働省「ロタウイルスワクチン」/難病情報センター「新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎」

