1歳の誕生日を迎えたのに、赤ちゃんの歯が1本も生えてこない――「うちの子だけ遅いのでは」と心配になりますよね。1歳で歯が生えないケースは、実は平均的な範囲から大きく外れていないことが多く、多くは体質や個人差によるものとされています。ただし、まれに歯ぐきの中の状態を確認したほうがよい場合もあります。この記事では、乳歯が生える順番と月齢の目安、様子見でよいサインと歯科に相談したいサイン、1歳6か月児歯科健診の使い方までを整理します。判断に迷うときは、かかりつけの小児科や小児歯科へ相談してくださいね。
まず結論:1歳で歯が生えていないのは「珍しくない」範囲
いちばん気になるのは「これは遅すぎるのか、待っていい遅さなのか」という点だと思います。最初に全体像を押さえておきましょう。
平均は生後6〜8か月。幅は4か月〜1歳4〜5か月
最初の乳歯(多くは下の前歯=下顎乳中切歯)が生えてくるのは、生後6〜8か月ごろが一つの目安とされています(参考:日本歯科医師会「テーマパーク8020」歯とお口の発生と育ち方)。
ただし、この「6〜8か月」はあくまで真ん中あたりの数字です。早い子では生後4か月ごろ、遅い子では1歳4〜5か月ごろに生えてくることもあり、この幅はいずれも平均的な個人差の範囲として扱われています(参考:母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」インターネット相談室)。つまり、1歳0か月〜1歳2か月ごろで0本というのは、統計的にみて「あり得ない遅さ」ではありません。
「遅い」と考える2つの節目:1歳と1歳6か月
とはいえ、いつまでも待てばよいわけでもありません。判断の節目は次の2つに整理すると考えやすくなります。
- 1歳を過ぎて0本……「そろそろ一度相談してもいい時期」。急ぐ必要はありませんが、歯ぐきの状態を確認しておくと安心です
- 1歳6か月を過ぎて0本……歯科での確認をおすすめしたい時期。1歳6か月児歯科健診の機会を活用しましょう
1歳を過ぎても歯がまったく生えてこない状態は「乳歯萌出遅延(にゅうしほうしゅつちえん)」と呼ばれることがあります。名前を聞くと不安になりますが、これは状態を表す言葉で、そのまま病気を意味するわけではありません。
いちばんのチェックポイントは「歯ぐきのふくらみ」
おうちで確認しやすい手がかりが、歯ぐきに白っぽいふくらみや、指で触れたときの硬い感触があるかです。ふくらみや硬さを感じるなら、歯は歯ぐきの下まで来ていて、あとは出てくるタイミングの問題であることが多いとされています。逆に、まったく気配がないまま月齢が進むときは、歯科でエックス線写真を撮ると歯胚(歯のもと)の有無を確認できます。
乳歯が生える順番と本数の目安【月齢別早見表】
「何か月で何本くらい」が分かると、今の状態を客観的に置きにいけます。あくまで平均的な目安として見てください。
基本の順番は「下の前歯 → 上の前歯 → 奥へ」
乳歯は多くの場合、下の真ん中の前歯2本から生え始め、続いて上の真ん中の前歯、その隣の前歯、そして第一乳臼歯(奥歯)、犬歯、第二乳臼歯……という順に進みます。全部で20本がそろうのは2歳半〜3歳ごろが目安です。
月齢別・本数と見方の目安表
| 月齢 | 生えている本数の目安 | この時期の見方 |
|---|---|---|
| 生後6〜8か月 | 0〜2本(下の前歯) | 平均的な生え始めの時期。0本でも幅の範囲内 |
| 生後9〜11か月 | 2〜4本 | 上の前歯が続くころ。0本でも歯ぐきの様子を見る段階 |
| 1歳0〜1歳3か月 | 4〜8本 | 0本なら一度相談してもよい時期。ふくらみの有無を確認 |
| 1歳4〜1歳6か月 | 8〜12本 | 0本が続くなら歯科で確認を。健診の機会も活用したい |
| 2歳〜2歳6か月 | 16〜20本 | 奥歯までそろってくる時期 |
順番が前後しても、それだけで問題とは限らない
「上の歯から生えてきた」「1本だけ先に出て次が来ない」というご相談もよくあります。生える順番の入れ替わりは比較的よくみられ、それ自体がただちに異常を示すものではないとされています。気になる場合は、健診のときに歯科医師へ口の中の写真を見せながら相談すると、具体的なアドバイスをもらいやすいですよ。
1歳で歯が生えない主な理由
理由を知っておくと、「様子を見る」ことにも納得しやすくなります。
もっとも多いのは体質・個人差
身長や体重の伸び方に個人差があるように、歯の生える時期にも大きな個人差があります。ご家族(パパ・ママ自身)が乳歯の生え始めが遅かったというケースも少なくありません。母子健康手帳が手元にあれば、ご自身の記録を見返してみるのも一つのヒントになります。
早産・低出生体重が影響することがある
予定日より早く生まれた場合や、出生体重が小さかった場合、歯の萌出も出産予定日を基準に考えると遅めに見えることがあります。修正月齢(予定日から数えた月齢)で見ると目安の範囲に入っていることも多いため、健診で相談する際は出生週数・出生体重もあわせて伝えると判断の助けになります。
まれな理由:歯胚の先天欠如・全身の状態
まれではありますが、歯のもとになる歯胚が生まれつき足りない(先天欠如)ケースや、全身の状態が関係しているケースもあります。これらはおうちでの観察だけでは判断できないため、気になる状態が続くときは自己判断で決めつけず、歯科・小児科で確認することが大切です。心配な気持ちを抱えたまま待ち続けるより、一度確認して安心材料を得るほうが、その後の時間をラクに過ごせることも多いですよ。
【セルフチェック】様子見?相談?おうち採点表
ここでは、相談のタイミングに迷ったときの整理用に、編集部で作成したセルフチェック表を用意しました。診断ではなく、「相談に行く決心の背中を押す道具」としてお使いください。
5項目・各0〜2点で採点
| チェック項目 | 0点 | 1点 | 2点 |
|---|---|---|---|
| 月齢 | 1歳2か月まで | 1歳3〜5か月 | 1歳6か月以降 |
| 歯ぐきのふくらみ・硬さ | はっきりある | なんとなくある | まったく感じない |
| 離乳食の進み | 順調に進んでいる | やや遅れぎみ | ほとんど進んでいない |
| 体重・身長の伸び | 成長曲線に沿っている | ゆるやかだが伸びている | 横ばい・下向き |
| 出生時の状況 | 正期産・標準体重 | やや早産・小さめ | 早産・低出生体重 |
合計点の読み方
- 0〜2点……いまは様子見でよい範囲。次の健診で「まだ生えていません」と伝えるだけで足りることが多いです
- 3〜5点……次の健診を待たず、かかりつけの小児科か小児歯科に一度相談を。口の中の写真を撮っておくと説明しやすくなります
- 6点以上……早めに歯科で確認を。エックス線で歯胚の有無を確認できるため、はっきりした見通しが得られます
なお、点数が低くても気になる症状や不安があるときは小児科・小児歯科へ相談して構いません。「点数が低いから行ってはいけない」という意味ではありません。とくに体重の伸びが横ばいのときは、歯とは別に成長の面から相談する価値があります。
相談するならいつ・どこへ?1歳6か月児歯科健診の活用
「歯のことは何科?」と迷う方も多いところです。窓口の選び方を整理します。
小児科と小児歯科、どちらでもよい
まずは日ごろの様子を知っているかかりつけの小児科に相談するのが気軽です。歯胚の有無まで確認したい場合は、エックス線撮影ができる歯科(できれば小児歯科)が向いています。小児科で相談したうえで歯科を紹介してもらう流れでも構いません。
1歳6か月児歯科健診はまたとない相談機会
多くの自治体では、1歳6か月児健康診査のなかで歯科健診が行われます。自治体によって受けられる期間の定めがあり、たとえば2歳の誕生日の前日まで受けられるとしている区市もあります(例:文京区「1歳6か月児健康診査(歯科健診)」)。歯科医師に直接みてもらえる機会なので、「まだ1本も生えていません」と必ず伝えてください。お住まいの自治体の母子保健情報もあわせて確認しておくと安心です。
相談のときに伝えるとよい5つの情報
- 現在の月齢と、生えている歯の本数(0本ならその旨)
- 歯ぐきにふくらみ・硬さを感じるか
- 出生週数と出生体重
- 離乳食の進み具合(形状・回数・量)
- 身長・体重の推移(母子健康手帳の成長曲線を持参)
メモにして渡すと、限られた診察時間でも要点が伝わりやすくなります。
この時期にありがちな3つの失敗と回避のコツ
ご相談を見ていると、「歯がないから」を理由にした遠回りが起きやすいことがわかります。よくある3つを挙げます。
失敗1:歯がないからと離乳食を進めない
前歯が生えていなくても、赤ちゃんは歯ぐきでつぶして食べることができます。歯の本数を理由に離乳食のステップを止めてしまうと、かえって食べる練習の機会を逃してしまいます。厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」でも、離乳の進め方は月齢と食べ方の発達を目安に示されています。月齢別の進め方は離乳食の進め方|月齢別スケジュール早見表と1日の回数・量の目安で確認できます。
一方で、歯ぐきでつぶせない硬さのものを急ぐと丸呑みにつながることもあります。噛まずに飲み込んでしまうときの見直し方は離乳食の丸呑みはなぜ?噛まない原因と月齢別の対処法・受診の目安にまとめています。
失敗2:歯が生えるまで口のケアを始めない
歯が生えていない時期でも、ガーゼで口の中をやさしくぬぐう習慣をつけておくと、いざ歯が生えたときに歯みがきを受け入れてもらいやすくなります。「歯が生えてから始めよう」と先送りにすると、生えたタイミングで急に嫌がられて苦労しがちです。始め方は赤ちゃんの歯磨きはいつから?月齢別やり方とフッ素入り歯磨き粉の選び方ガイドを参考にしてみてください。
失敗3:SNSや同月齢の子と比べて焦る
同じ月齢の子が8本生えている写真を見ると、どうしても比べてしまいますよね。ただ、歯の生える時期は前述のとおり1年近い幅があります。比べるなら他の子ではなく、1か月前のお子さん自身と比べてみてください。歯ぐきのふくらみ、食べられる形状、体重の伸び――どれか一つでも進んでいれば、それは前に進んでいるサインです。
よくある質問
Q. 1歳で0本ですが、離乳食は完了期に進めてよい?
歯の本数ではなく、食べ方(口の動き)と月齢を目安に進めるのが基本です。歯ぐきでつぶせる硬さ(指でつぶせる程度)を保ちながら、形状を少しずつ大きくしていきます。うまく進まないときは健診や小児科で相談しましょう。
Q. 歯が遅いと歯並びが悪くなりますか?
生え始めが遅いこと自体が歯並びを決めるわけではありません。ただし、生える順番や本数に気になる点があるときは、健診の際に歯科医師へ相談しておくと、その後の見通しを立てやすくなります。
Q. 歯ぐきをマッサージすると早く生えますか?
マッサージで萌出を早める効果が確認されているわけではありません。歯ぐきがむずがゆそうなときに、清潔な指やガーゼでやさしく触れてあげるのは、口を触られることに慣れる練習として役立ちます。強くこすらないようにしてください。
まとめ:1歳0本は「待てる遅さ」のことが多い。節目は1歳6か月
- 最初の乳歯は生後6〜8か月が目安。早い子は4か月、遅い子は1歳4〜5か月で、この幅は平均的な個人差の範囲
- 1歳で0本は珍しくありませんが、1歳6か月を過ぎても0本なら歯科で確認を
- おうちの手がかりは歯ぐきのふくらみ・硬さ。感じられないまま月齢が進むときは相談を
- 相談先はかかりつけの小児科でも小児歯科でも構いません。1歳6か月児歯科健診は絶好の機会
- 歯がなくても離乳食と口のケアは進めてよい。歯の本数を理由に止めないこと
歯が生えるのを待つ時間は、想像以上に長く感じられるものです。けれど、赤ちゃんの成長は歯だけで測るものではありません。体重が増えている、食べる量が増えている、笑う回数が増えている――そんな小さな前進を数えながら、節目には専門家の目を借りていきましょう。気になる症状や不安があるときは、遠慮なく小児科・小児歯科へご相談ください。
※本記事は、日本歯科医師会「テーマパーク8020」、母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」、自治体の母子保健情報(1歳6か月児歯科健診)などの公開情報をもとに作成した一般的な解説です。特定の医療機関・専門家による監修を受けたものではなく、診断や治療の判断に代わるものではありません。お子さんの状態については、かかりつけの小児科・小児歯科にご相談ください。

